副業で養蜂に取り組むとはいえ、趣味ではなくハチミツを実際に販売するとなると、法令は無視できません。
むしろ「副業」であるがうえに、本業との兼ね合いもあり自分の身を守るために細心の注意を払いたいところです。
しかしそうは言われても、「法令関係」といわれると面倒くさくなってしまいます。
ただ都合の良いことに、ハチミツは他の食品に比べその扱いが圧倒的に楽です。
なるべく分かりやすいようスムーズな段取りをご案内しますので、法令関係をしっかり理解し脇を固め、心配事を抱えずシッカリ稼いでいきましょう。

養蜂に関わる法律の全体像
「食品×法律」の組み合わせを想像すると、とても手間がかかり厄介な印象をうけてしまいます。
資格や設備、技術が求められそうでとても手が回らなそうな印象さえ受けてしまう方もいるかもしれません。
しかしハチミツはそれ自体に抗菌成分が入っていることや、何年たっても腐食しないという特性上、他の食品に比べ法律での取り扱いは大変にゆるやかです。
ミツバチを飼う前からはちみつを販売するまでの大まかな順番を時系列で書くと、下の図のとおりになります。

❶蜜蜂飼育届
養蜂を行う際には、「蜜蜂飼育届」の届出が必要です。これは養蜂振興法という法律で定められたものです。
これはあくまで「届出」なので、許可・不許可が降りるというものではありません。届け出て終わりです。
すでに養蜂を行っている人は毎年1月末日までに、その年の届け出を行わなければなりませんが、はじめて養蜂に取り組む方は1月末日という期限を気にする必要はありません。
始める前に目安として2カ月前くらいに提出すればOKです。
届出先は??養蜂は面白いことに「畜産業」にカテゴリーされるので、それぞれ都道府県に設置されている「家畜保健衛生所」であったり「 農政部畜産課」に届け出ます。
❷食品衛生責任者の資格取得
養蜂でミツバチを飼うことに必要な資格はありませんが、販売するために採ったハチミツを瓶詰めする作業に資格が必要になります。
その必要な資格が食品衛生責任者の資格となります。
似通った資格で食品衛生管理者という資格もありますが、これは簡単にいうと食品衛生責任者の上位互換の資格です。
はちみつの瓶詰めには必要ありません。

ではどうやって資格を取るの?
となりますが、それは各都道府県の食品衛生協会が主催している講習を1日(6時間)受講して終了です。受講料は税込み1万円です。
まとまった時間が取れない人はe₋ラーニング方式でも受講でき、自分のペースで30日以内に6時間分の講習を進め、講座を修了することもできます。
私はこのe₋ラーニング方式で受講しました。教材のクオリティが高く、しかも自分のペースで受講できストレスなく取り組めたのでほんとうにオススメです。
❸保健所への営業許可申請
食品衛生責任者は、はちみつを扱う「人」というソフト面での資格ですが、保健所の許可は「場所」というハード面の許可申請となります。

そうそう行くことのない保健所での申請となると、「なんかたいへんそうだな。。。」と身構えてしまうかもしれませんが、申請して許可が下りるまでは15分程度で終了します。
場所に対する許可となると、「図面をもっていかないと許可されないのかな??」「特別な設備なんて設けていないけど大丈夫なの??」と心配になってしまいます。
しかし基本、場所は自宅の使っていない部屋やスペースでOKです。それを口頭で伝えるだけです。
地域によっては、専用の水回りの有無をきかれてそれを満たせないと許可が下りないなど、厳しい地域もあるようです。
そうなったら、公共などの「レンタルキッチン」を作業場として申請すればOKです。
レンタルすると有償でコストがかかってしまう場合もあろうかと思いますが、採蜜は一年に多くて3回程度の作業です。養蜂一年目の場合なら、どんなに多くても採蜜は2回程度でしょう。
あまりそこのコストを気にする必要はありません。
ただ、許可申請書に必要事項を記入して終わりと思いきや、事前に作成して持っていかなければならないものがあります。
それは、「蜂蜜の採蜜・衛生管理台帳」です。
なにか名前からして作成するのが大変そうな雰囲気が香り立ってきます。
そもそもどのような感じに作るのが正解なのかすら分かりません。
しかも衛生管理台帳は、HACCP(ハサップ)という、令和3年6月1日から食品等事業者に課された新たな衛生管理の指針によって求められるようになったものです。
この制度により、食品事業者に求められる衛生管理の水準が高いものとなりました。
これをきくとさらに嫌になってきます。
というか、そんなの無理じゃない??
という気になってしまいますが、諦めるのは早いです。
解決法があります。それは日本養蜂協会のホームページに掲出されている
「蜂蜜の採蜜・衛生管理台帳」というリンクをクリック。
すると、その台帳のひな形が完成しているではありませんか!!
この台帳の表紙に自分の養蜂園の名前を書いて完了です。
一般社団法人 日本蜜蜂協会 さま。 ほんと神です。
このように秒で作成が完了した「蜂蜜の採蜜・衛生管理台帳」を携え保健所へ赴き、A4用紙の「営業許可申請・営業届」に簡単な必要事項を記入して完了です。
ただ、届出に記入の際に、❷でご案内した食品衛生責任者の資格取得で得た資格番号が必要になるので、講習後に授与される「食品生成責任者養成講習修了証」も忘れず持っていきましょう。
❸表示ラベルの作成
不当景品類および不当表示防止法(「景品表示法」といいます。)に基づいて、はちみはその原材料や内容量、賞味期限、保存方法、製造者等を表示ラベルで瓶に貼ることが義務付けられています。

このラベルを採れたハチミツの瓶に貼り、すべての法律をクリアし販売開始となります。
❹そういえば個人事業主登録って、副業で必要??
副業の場合、給与所得以外が20万円以下なら確定申告は不要です。
したがって、年間20万円以上稼げそうではない場合は個人事業主登録は不要です。一年目からたくさんの群を管理して大きな稼ぎを狙う場合い以外は、個人事業主登録は必要ありません。
「せっかくやるなら個人事業主登録して自分の旗を掲げたい!!」
というかたもいるかもしれません。そういった場合は、地元地域の税務署で
「個人事業の開業・廃業等届出書」というA4書類に必要事項を記入して完了です。所要時間は15分程度です。
ただ、会社等の都合で自分の名前を使えない場合は、奥様や家族の名前で登録しておくのが安全でしょう。
まとめ 脇を固めてしっかり稼ぎましょう
今回は養蜂で稼ぐことにまつわる法令関係について解説しました。色々な疑問や心配事を抱えて養蜂に取り組むのは楽しくありません。
法令関係をしっかり理解し脇を固め、心配事を抱えずシッカリ稼いでいきましょう。

この記事を書いた人
西山リョウ
明治大学 政治経済学部 経済学科 専攻:労働経済学
大学3年次、4年時に「労働経済学」の研究室(ゼミ)に在籍。研究に研究を重ねた結果、「どうやら私は働くことが好きではない。」ということを発見する。
そして卒業後にふつうに就職し、その後に地方公務員へ転職。 そして会社勤めが精神的にいよいよ限界を迎えたころ養蜂家へ転身。
初年度から収益化。その後は生産するハチミツがふるさと納税の返礼品 になり、市の観光協会でも取り扱われる商品になる。 そして県立動物公園の養蜂コーナー設立の技術指導、コンサルを請け負い、はちみつ専門メディアの「はちみつ大学」のライターとしても活動中。
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