同じ農業系でも、家庭菜園を始めるとなれば必要なものはイメージしやすいですが、始めるのが養蜂となると必要資器材などなかなか思いつきません。
刺されないための服なんかは必要そうだけど、その他には何が必要??そもそも蜂とかってどうするの??
養蜂は蜂の巣箱を置いておけばOK!みたいなイメージですが、結構必要な物はあります。
ただスタートしたばかりのときは、まだ買わなくて良いものもたくさんあります。
まだ必要のないものをいつか必要になるからといって一気に購入してしまうのは、事業を行う上でのキャッシュフローとしてよろしくないです。
それは「挫折してしまったら買ったものが必要なくなるから」ということではなく、タイミング的に必要になるのが後、ということです。
養蜂をスタートさせるのに、最初に必要な物とその理由、その適正な価格帯を解説いたします。
第1回目である今回は、一番大切な種蜂(たねばち)について解説いたします。
種蜂とは、養蜂を始める際に必要なみつばちのことです。
当たり前ですが、ハチミツをとってきてくれるミツバチがいないと始まりません。
ミツバチといっても日本にはニホンイツバチとセイヨウミツバチがありますが、 ここでは趣味としてではなく業として行う養蜂で一般的なセイヨウミツバチについて解説します。
みつばち(種蜂)
さて、養蜂を始める上で扱うミツバチですが、シンプルに購入すれば済みます。
日本ミツバチと違い捕まえる必要はありません。ただ、ネットで検索すると色々な業者があり、価格もまちまち。
しかも、3枚充満群、4枚充満群、新王群、旧王群などいろいろな条件で販売されています。 いったいどれがいいの??
結論からいうと、どれでもOKです。
私だったら、なるべく安いものを購入します。
スタート時点に3枚であろうが4枚であろうが、春の流蜜期になればミツバチの数は指数関数的に増えてゆき、ほんの数日で3枚が4枚、4枚が5枚になってきます。
1枚多いか少ないかで、数千円から数万円の価格差があります。
ほんの数日の差分にそれだけの金額を支払う理由と必要性はありません。
また、「新王群と旧王群どちらがいいのか問題」についてです。
新王群というのは販売される年に生まれた女王がいる群で、旧王群とは越冬した女王がいる群です。
女王蜂は産卵することだけが仕事で、その産卵数の多さが養蜂の成否をわけるところであります。
しかし新王であろうが旧王であろうとそう大きくは変わりませんません。
なぜなら産卵数は女王の遺伝的形質に左右されることがほとんどなので、一年前であろうが今年であろうが、そこは大した問題ではありません。
つまり、「新王だから安心!」とはならないのです。
では、なぜ価格がちがうの?
となりますよね。
それは新女王は、「分蜂(ぶんぽう)という巣別れをしずらい」 からです。
分蜂をされてしまうと、コロニーの蜂の数は半減してしまうのでおおきな損失になってしまいます。
しかし、2群という少ない数では初めてきちんと管理すれば分蜂を防ぐこともできます。
したがって買おうとしている蜂問屋の新女王が高くて旧女王と大きく値段が違うようなら、旧女王のほうが良いかと思います。
こういった理由から、はじめての養蜂の場合は、種蜂を安く購入することが一番です。
そもそも買うのは昆虫です。みんな均質的で同じ姿かたちをしています。
物やサービスを購入するときのように、高いからってそれなりの品質のものがくる、というわけではありません。
ただ、姿形は同じであっても、その個体がもった遺伝的形質が養蜂の成否を大きく左右するのも事実です。
人間でも、才能や向き不向きのありかたは人それぞれです。運動が得意な人、勉強が得意な人、芸術が得意な人。それぞれ違います。
面白いことに蜂という昆虫も、蜜を集めるのが得意な群、花粉を集めるのが得意な群、病気に対する耐性が強い群、などなど。
その才能という遺伝的形質はまちまちです。
じゃあどうやって遺伝的形質の良い群を購入したらいいの??となりますが、それを事前に判別するのは不可能です。
どんなに信頼が置ける種蜂屋さんであっても、どの群れがたくさん蜜を集めてくれる群れなのかを判別するのは、春の流蜜期にならないと分からないからです。
ただ、もっともベストな方法は、養蜂家から直接購入する方法です。
そうそう起こることではありませんが、配送が雑な業者にあたってしまうと、巣箱内の蜂が半分しんでいた。。女王がいなかった。。などが起こることがあるのも事実です。
なので引き取りにいける距離に信頼できそうな養蜂家がいたら、直接買ってしまうのがベストです。
種蜂の状況を見てから購入できますし、顔なじみになっておけば困ったときに助言をしてくれるかもしれません。
受け取るにも運ぶ軽トラとかもっていない!!という場合でも、巣門を閉じれば運べますし、それでも心配なら念には念をで輸送用の網で巣箱を包めば完璧です。
信用できそうな養蜂家を見つけるなんてそうそうできることではありませんよね。そんな場合は、やはり無理のない価格帯の群を購入しましょう。
初期費用にかかった12万円を回収することは十分可能です。考えすぎて時間を費やし、流蜜期である春を逃してしまうのはもったいないので、検討しすぎず購入することがおすすめです。
種蜂を買う時の注意点
間違って交配用のミツバチは買わないで
注意点としては、交配用といってイチゴやメロン、リンゴなどの交配用のミツバチも販売されており、これは非常に安いので気になってしまいます。
しかし交配用のミツバチの群には注意が必要です。
なぜなら普通の群にいるはずの女王蜂が、その群れにはいないからです。
女王蜂がいないと産卵する蜂がいないということなので、数か月すると全滅してしまいます。
なぜ交配用のミツバチの群には女王蜂がいないのでしょう??
なぜなら交配用のミツバチの群は、その交配する作物の花が咲いているときにだけいればいいのです。
このような理由から、交配用のミツバチではなく養蜂用のミツバチを購入しましょう。
始めるときは2群から
そしてもう一つは、2群の購入を強くオススメします。なぜなら2群で飼育した場合、もう片方の群れが調子を落としてピンチに陥っても、もう片方で助けることができるからです。
具体的には、何らかの事故や病気で女王蜂が死んでしまった群に、もう片方の群から卵を移動させることで、女王がいなくなった群に新女王を誕生させて対応したりすることができます。
もしくは、片方の女王の産卵の調子がわるくミツバチの数が減ってきてしまった場合も、もう片方の順調な群から卵を移すことで対応できます。
女王がいなくなったミツバチや産卵の調子が悪くなった群は、子孫を残すことができず、2~3ヶ月もすれば全滅してしまいます。

この記事を書いた人
西山リョウ
明治大学 政治経済学部 経済学科 専攻:労働経済学
大学3年次、4年時に「労働経済学」の研究室(ゼミ)に在籍。研究に研究を重ねた結果、「どうやら私は働くことが好きではない。」ということを発見する。
そして卒業後にふつうに就職しその後に地方公務員へ転職。そして会社勤め生活が精神的にいよいよ限界を迎えたころ養蜂家へ転身。
初年度から収益化。その後は生産するハチミツがふるさと納税の返礼品 になり、市の観光協会でも取り扱われる商品になる。 そして県立動物公園の養蜂コーナー設立の技術指導、コンサルを請け負い、はちみつ専門メディアの「はちみつ大学」のライターとしても活動中。
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